高収益を出されている医療法人においては、利益の蓄積により出資持分評価が高騰していきます。従って、理事長の個人財産は高額となり、相続・医業承継に係るコストも比例して多大になるわけです。このままでは理事長に万一の事があった場合、「相続税が支払えない」「平等な遺産分割が出来ない」といったことが想定されます。
相続税の支払いは相続開始から10ヶ月以内の一括現金納付が原則で、物納は基本的に認められません。
さらには、納付期限までに財産分割協議書に相続人全員が捺印の上、遺産分割を終わらせなければ、相続に関わる優遇税制(配偶者控除や小規模宅地の特例)の恩恵が受けられなくなってしまいます。
理事長の多くは「相続税を支払えるか心配」とのことで持分なしへ移行を検討されているようですが、悩みの種となっている「出資持分」に対する課題を払拭することが出来れば、持分ありのまま法人を継続させていきたいとお考えの理事長も多いのです。
実際に日本医師会の調査によりますと、持分なし医療法人へ移行を考えていないと回答された理事長が 91.8%という結果が出ています。
(平成24年 日本医師会「医療法人(診療所)の現状と課題に関するアンケート調査報告書」)
持分なし医療法人になると、財産権は国に帰属します。出資持分に対する相続税の心配はなくなりますが、医療法人を解散すると残余財産はすべて国に没収されてしまいます。
財産が国に没収されるのであれば、「法人の利益はなるべく外に掃き出しておこう」「急な資金繰り悪化に備えて個人で現金を持っておこう」と考えますが、移行要件の中に「役員報酬が『不相当に高額』ではない」という役員報酬要件があり、報酬を増額して個人で受け取ることを国は制限しています。
こうした背景から医療法人は、内部留保(利益剰余金)を報酬以外で理事長個人や MS法人へ移転していく仕組みを考える必要があります。では、どのように利益移転を図っていけばよいのでしょうか?
詳しくは、「合理的に医療法人から利益移転を検討する」以降にてご説明します。
平成29年10月改正内容 ~持分なし医療法人へ移行するための要件とは
なぜ持分なし医療法人への移行を検討するのか?
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