事業承継の選択肢として増えているM&A
後継者不足の問題を抱える中小企業が増加しています。
昨今、経営者の高齢化が進み、さらには少子化も進んでいます。
その結果、経営者がいざ勇退を考えた時、後継者となりうる人材がいないという事態が増加しています。
また、経営者に子供がいたとしても、必ずしも親の会社を引き継ぐとは限らない場合や、子供に自分と同じ思いをさせたくないという理由から、親族に引き継ぐことを躊躇するケースも増えています。
M&Aといえば、以前は大企業が行うものというイメージでしたが、ここ最近では中小企業においてもM&Aが活用されています。
それは、中小企業が抱える様々な問題(後継者不在・人材不足・従業員の高齢化等)を解決する方法として、M&Aが有効であることが広く認識され始めたことが、M&A市場拡大につながっているのではないでしょうか。
ヒューマンネットワークのお客様の
共通の課題
弊社は1999年に設立しました。
その間の20余年、「オーナー企業の課題解決に貢献するため」に、情報発信や法人保険活用の提案を行ってきました。
ここ数年は、事業承継の時期を迎えたお客様から、個別のご相談を受ける機会が増えています。
「自社株問題」「税負担の問題」「後継者にかかわる問題」「退職金にかかわる問題」など、お客様ごとに個別の事情があり、簡単に結論がでないものばかりです。
特に将来、会社を「誰に」「どのタイミングで」「どうやって」承継していくのかは、オーナー社長にとって、大きな宿題です。
折角、法人契約の保険を活用して退職金の準備をしても、事業承継が実現できなればオーナー社長は勇退できません。
「事業承継ができない」という理由でオーナー社長が経営トップに居続けて、自社株を持ったまま相続が起きてしまったら、
オーナー社長の家族は、自社株の相続税や社長個人が連帯保証していた債務など、負の遺産を背負うことになってしまいます。
今回は、戦略的事業承継としてM&Aを実現した弊社のお客様の事例をご紹介します。
5年をかけ準備した「事業承継」への道のり
A社長は、事業承継を行う5年前から、真剣に後継者問題に取り組んできました。
当時52歳だったA社長は、「5年後に各部の部門長を若手社員に切り替える」と宣言し、そのための体制作りを少しずつ整えていきました。
ただし、A社長の経営者という役割を他の役職と同じように5年後に切り替えるのは難しいと感じ、社員には「社長交代に関してはもう少し猶予がほしい」と話していました。
後継者を選ぶに当たっては三つの選択肢がありました。
1)社内の人材、2)社外から招聘、そして3)社長のご子息に承継という三つです。
この中で、ご子息に経営を任せるというのは一番最初に消えた選択肢でした。
当時、社長のご子息は大学2年と高校1年で、会社に入るかどうかも、経営者としての素質も分からない状態でしたので、現実的ではありませんでした。
社内の人材は能力の高い技術者ですが、経営となると話は別です。
熟慮を重ねた結果、「経営に関しては、ある程度専門的な知識を持った企業と一緒になることがベストではないか?」
と考えるようになりました。
そこで、「M&A支援」を行っている会社に譲り受けてくれる会社探しを依頼することにしました。
その後紹介を受けた数社と面談した結果、双方の希望が合致する企業と巡り会えたため、M&Aを実行することができました。
後継者不在の中で、抱えていた危機感
数年に渡り後継者を社内または社外からと検討された後、M&Aを実行したA社長の気がかりなことは、何だったのでしょうか?
それは、銀行との交渉や資金繰り、人材の採用、将来の計画や方向性の決定など、企業の根源に関わる重要なことをほとんどA社長が決めていたことでした。
「明日、A社長自身に何かあったらこの会社はどうなるのだろう?」という危機感を常に持っていたそうです。
「社員や家族に迷惑をかけたくない」という強い思いが、M&Aという選択を決断させました。
100%理想通りのM&A
A社長がM&Aを行なう際、譲れなかった条件は、「関わる人皆が幸せ」ということが前提でした。
従って、①社名を含め現行の体系や社風を守ることと、②社員の完全雇用が第一条件でした。
この条件を快諾できる相手を探していくなかで、3社の経営トップと面談をしました。
1社目は、思想的にも業績的にも立派な企業でしたが、A社の社風とは肌合いが違うと感じ、見送りとなりました。
2社目は、先方の経営者と相性が良く、契約寸前までいきました。しかし、話が進むうち相手先には守るべき規範が多々あることが分かり、そうなるとA社の個性がなくなってしまうことが分かり、断ることとなりました。
そして、3社目に今回の譲り受け先と出会うことが出来ました。
この会社に決定した大きな要因は、経営陣の人柄が良く、考え方も非常に合ったこと。
話を進めていくなかで、「この企業なら信頼できる」と強く感じ、合意に至りました。
譲渡契約実行までの期間は、面談から半年ほどかかりました。
業績と社風が両輪M&A
M&Aを実行したA社長が感じたことは、理想的な相手に巡り会え、条件もA社長の希望通りになったことへの感謝だったそうです。
譲り受け先経営者からは、業績だけでなく社風が良いと褒められました。
A社長いわく、働きやすい環境をきちんと整えているからこそ、社員が皆実力を発揮でき、実力が発揮できたことによって業績も良くなり、そして顧客満足度も考えられるようになったと言われています。
その結果、自信をもって相手先へ自社のことを伝えられるようになったことが、A社長の希望を実現させました。
法人で活用している保険の使い途や事業承継対策を考えていく中で、「M&A支援」でもお役に立てれば幸いです。