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2019年11月21日 ※税法上の取扱いについては、ブログ投稿時の税制によるものです。
こんにちは、カスタマーリレーション部の安蔵です。
平成30年7月、約40年ぶりに相続に関する大きな民法の改正がありました。
今回の改正は、相続人が複数名いる経営者に与える影響が大きいことを
ご存知でしょうか?
場合によっては既に検討してきた相続対策の内容を見直す必要があるかもしれません。
そこで今回は、改正された内容のうち、特にオーナー企業の経営者に関係の深いものを一部、
簡単にご紹介します。
今回の主な民法改正のポイントを一部ご紹介します。
① 『遺留分侵害額請求権』の新設 (令和元年7月施行)
「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」に変わりました。
「遺留分の侵害額請求」では、請求する側が
「金銭での支払い」を要求することが出来るようになりました。
ただし、支払う側が金銭を準備することが困難な場合などには、
当事者間の合意のもと、金銭以外の資産を移転することで
解決することも想定されます。
この場合は譲渡所得になるため、所得税の課税関係についての留意が必要です。
また、遺留分の計算における
被相続人の生前に贈与によって取得した財産については、
「相続発生から10年以内の特別受益のみを対象とする」旨の改正もありました。
② 被相続人の預貯金に関する取扱いの変更 (令和元年7月施行)
これまでは原則、遺産分割が成立する前は、
被相続人の預貯金を引き出すことが出来ませんでした。
今回の改正により、遺産分割が成立する前であっても、
被相続人名義の預貯金の一部が引き出し可能になりました。
これにより、相続財産の中から当面の生活費や葬儀費用の支払いなどの
お金を引き出すことが出来ます。
③ 「配偶者居住権」の新設 (令和2年4月施行)
被相続人と同居していた配偶者が自宅を相続しなかった場合でも、
その家に住み続けることができる権利が新設されました。
これにより、配偶者以外の相続人が家を所有した場合にも、
配偶者が住み続けることが出来るようになりました。
④ 自筆証書遺言の取り扱いの変更 (令和2年7月施行)
自筆証書遺言は全て自筆しなければなりませんでしたが、
財産目録についてはパソコンで作成することが認められました。
また、法務局での自筆証書遺言の保管が可能となります。
これにより、自筆証書遺言を自宅で保管することによる、
紛失や隠匿などのリスクの対策が可能になりました。
今回の改正のうち、最もオーナー企業の経営者に大きな影響を与えるものは、
今年7月に施行された ①「遺留分侵害額請求権」の新設 だと考えられます。
オーナー企業の経営者の場合、相続財産の大半が自社株と言われています。
そのため自社株を後継者1人が相続したことにより、
他の相続人の遺留分を侵害するケースは少なくありません。
仮に、後継者以外の相続人が遺留分の請求をした場合、
民法改正前は請求する側が「金銭での支払い」を要求することは出来ませんでした。
つまり、あくまでも支払う側が民法上の原則である
「相続財産の分割共有」をするか、「金銭で渡す」かを選択していました。
民法改正後は請求する側が「金銭での支払い」を要求することが出来るようになったため、
後継者に十分な現金資産を残せないと、金銭で遺留分の支払いを求められた際、
後継者が借金をすることになるかもしれません。
しかし、金銭での支払いの請求を受け、
直ちに金銭を準備できない場合には、請求された側は裁判所に対し、
金銭債務の全部または一部の支払いについて、
一定の支払い期限を求めることはできます。
とはいえ、後継者が遺留分の請求によって借金を負うことにならないためには、
どのような対策ができるのでしょうか?
『遺留分侵害額請求』への備えとして、有効な対策を4つご紹介します。
① 相続人・被相続人の現金資産の割合を高める
② 相続財産を遺留分の対象外になるものへ切り替える
③ 遺留分を配慮し、遺言書の内容を見直す
④ 贈与や事業承継税制等で生前に移行する株式数を調整する
今すぐできる対策としては、効率的に後継者へ現金資産を用意することと、
遺留分の対象外になる資産を増やすことです。
しかし、単純に後継者の報酬を増やしても、
高額な所得税を支払うこととなり、
非効率的になる可能性もあります。
いつ、どのような方法で効率的に準備するのが良いのか、
事前の対策についてご関心のある方は、
是非一度、弊社へお問合せください。
お気軽にお問い合わせできるよう複数の窓口を用意しております。