自社株の評価が思いのほか高い
T社長は東海地区を拠点にに食品の卸売業を営んできた。
創業して早いもので30年となる。
堅実に会社を成長させて、売上40億、従業員60名、地元でも優良な中堅企業となった。
T社長は今年60歳。
還暦を迎え、そろそろ自身の勇退のことや会社の事業承継について真剣に考えている。
ところで、T社長には長男・長女2人の子供がいる。
長男に会社を継がせようと考えて、5年前から自社に入社させた。
無論、社長業を習得させるためだ。
その長男も今年30歳となった。
社長の器には、まだ遠い実感だが、10年以内に社長を承継したいと願っていた。
そんな中、顧問税理士から思いがけない指摘が…。
会社が成長して株価が高騰、株を承継・相続する場合に多額のコストを要するという。
では実際、どの位のお金が必要なのか?概算額を掴もうと考えて、まず自社株の株価診断を行った。
結果、前期の決算書による株価評価は、額面5万円に対して16倍の80万円!
そして今後、今の業績を続ければ、さらに株価は高騰していくそうである。
聞いてT社長は愕然とした。想定外の自社株高騰!
納税資金はどうする?まさに青天の霹靂となった…。
今、後継者は相続税が払えない
この時、T社長の頭をよぎったのが、自分に何かあったときに家族は相続税が払えるのか?ということだった。
創業以来、会社の拡大・発展が第一で、自身の役員報酬はそれなりにはとっている。
でも、個人で負担することも多く、それほどの現金資産は残していない。
今の株価評価でいくと、自社株が個人資産の大半ということになってしまう。いやはや大変だ…。
自分に万が一の場合、一体、いくらの相続税がかかるのか?
その相続税は手元の現金でまかなえるのか?
顧問税理士に相談したところ、その回答はこうだ。
相続税の金額は、「誰にどう財産を分けるのか?それによって金額はかなり異なる。」とのこと。
そこで、とりあえず自社株は後継者候補の長男、現金は、妻と長女に半分ずつ、自宅は妻。
という分け方で試算してもらった結果、長男は相続税の支払いに窮して、借入をしなければ納税できないことが分かった。
さらに問題なのは、自社株の割合が突出して高く、長女の「遺留分」を侵害して、揉める火種になる可能性があるという。
相続税の納税資金が工面できる?!
こうしたなかで、東京会計パートナーズ主催の「自社株対策セミナー」にご参加いただいた。
その後の個別相談では、税理士の芦辺が次のように回答した。
-自社株対策のスキームは様々あるが、一度実行してしまうと後戻り出来ない方法が多いのが難点だ。
そのような中、社長に万が一があった際には、長男が相続した株を会社が買い取る方法、自社株買いが望ましい。
自社株買いは「金庫株」とも呼ばれるが、活用することにより国の特例で長男にかかる税率は低く抑えることが可能であり、長男に入った売却代金は、相続税の納税原資になる。-
T社長にとってこの話は「目から鱗」だった。
併せて税理士の芦辺は、会社が株式を買い取るための資金を無理なく作る方法について説明した。
「これなら何とかなりそうだ。」T社長は早速、株式の買い取り資金を作る方法に着手した。