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金持ち社長のほとんどが世代交代でつまずく

※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。

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アベノミクスによる景気回復を背景に

「金持ち社長」が急増している日本。

しかし、資産が増えるのはいいことばかりではありません。

築き上げた個人資産と事業をいかに「残す」かについて悩む経営者もまた、

急激に増えているのです。


経営者の高齢化、税制改正による相続税や所得税の負担増...。

個人資産と事業を「残す」ことを防げる要因はさまざまですが、

現状、資産の防衛と事業承継に失敗して、

すべてを無に帰してしまう経営者は少なくありません。


経営者としては優秀で、

常に正しい判断を行って事業を拡大してきたにもかかわらず、

なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか。

その理由には、大きく二つあると考えています。


一つは、事業承継に関して相談できる適切な相手がいないということです。

オーナー経営者の下には日々、

あふれるほどの情報が寄せられているでしょう。

銀行、不動産会社、生命保険会社...。

事業承継対策に関しても数多くの提案を受けているはずです。


どれも魅力的な手法に思えるかもしれません。

しかし、どの対策が最も有効なのかは、企業によって異なります。

とある会社には有効な対策であっても、

別の会社には逆効果になることもあります。

しかも、各商品の営業担当者はデメリットについて詳しく説明しようとはしません。


同じことが1990年代のバブル期にも起きました。

数多くのオーナー経営者が、

節税あるいは資産運用を目的に不動産や金融商品に投資を行ったのです。

会社の利益を投資に回すだけでなく、

節税効果を上げるため必要のない借入金を利用するケースも少なくありませんでした。


その結果、どうなったでしょう。

バブルは弾け、日本は長いデフレに突入しました。

不動産も金融商品も値下がりし、大きな損失を抱えてしまったのです。

借入金を利用していたケースでは、経営を揺るがすような損害を被ったはずです。

結局「何もしないほうがまだよかった」ということになってしまったのです。


その状況が今、繰り返されようとしています。

自分の会社にはどの対策がベストなのかを見極めずに、

金融機関の提案する事業承継対策に飛び乗ってしまうと、

取り返しのつかないことになってしまうのです。


ここ最近の、企業経営の実情を考えてみましょう。

中小企業の場合は特に、人付き合いを非常に大切にする経営者が多いものです。

長い付き合いの顧客を重視し、地元の銀行にも取引先を紹介するなど積極的に協力しながら、

地域に根ざした経営を続けています。


そんな中、銀行をはじめとする金融機関から賃貸マンションやゴルフ会員権、

海外債権などを購入して事業承継対策をすることを勧められ、

付き合いの意味でもついつい応じてしまう――そんな経営者はしばしば存在します。


借入額は大きくなりますが、"節税になる"という銀行の言葉を信じ、言

われるままに金融商品や不動産を購入してしまうのです。

経済が安定している時期は、それでも大きな問題にはなりませんでした。

ところが、状況を一気に変えたのが2009年のリーマンショックです。


市場が大暴落し、金融商品や不動産の時価が一気に下がりました。

賃貸マンションの収益も悪化し、多くの場合、

賃貸料収入だけでは銀行の金利の支払いさえできなくなってしまったのです。


すると、晴れた日に傘を貸し、雨が降れば取り上げるのが銀行です。

企業に対し、「元本は当面は据え置きでいいですから」

と言っていたはずの借入金についても、返済を求めるようになりました。


売却をするにも、購入時との差額が大きければ損切りに踏み出すのは抵抗が生まれます。

決断を躊躇しているうちに、さらに下落していく時価。

多くの経営者は個人名義の定期預金や生命保険を次々に解約し、

資金を会社に投入することで何とか返済が滞らないようにしました。


一方で、不景気により企業が営む事業自体に陰りが見え始めます。

堅実な経営で得意先との信頼関係を築いてきた企業でも、

海外製の商品がどんどん輸入される中で、価格競争にさらされることになったのです。

利益率が下がっても人員削減に踏み切れる経営者は少なく、

ほとんどは収益を悪化させてしまいました。


結果、借入金の返済が滞り気味になっていきます。

業績悪化を聞きつけた銀行の営業マンは、経営者に返済を迫ります。


そうなってしまうと、銀行へ「これまでの協力に対して評価をしてもらえないか」

と窮状を訴えても無駄です。

銀行は「多額の資産購入の調達資金として借入金を決断したのは御社でしょう」

というスタンスを崩しません。


そこで迫られるのは、経営者の自宅を売却して返済することです。

長年住み慣れた邸宅を離れ、手狭な賃貸マンションに転居することとなった経営者。

心労のせいか体調を崩してこの世を去ってしまった方もいます。

結果、負の遺産を受け継ぎ、今でも大いに悩む子孫が数多くいるのが現状です。

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