2020年03月26日 ※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。
誤解を恐れずにいえば、相続対策において、
相続税をゼロにするということ自体は、
それほど難しいことではありません。
しかし、相続税だけに着目した対策を実行し、
相続税はゼロになったけども、会社が破綻してしまったり、
家族がバラバラになってしまったり、
後悔している人たちは過去にたくさんいます。
そこまではいかなくとも、相続税は安くなった一方で
法人税や所得税が高くなってしまっている人もいます。
しかも、それに気がついてさえいなかったりするのです。
他にも、相続税は安くなったけれど、
毎年、そのスキームの維持にコストがかかって、
被相続人であるお父さんが長生きすればするほど、
コストがかさむという対策もあります。
こうなってしまうと、父親に早く死んでくれと言わんばかりです。
親族同士が相続時のもめごと以来、しこりが残ってしまって、
法事やいとこの結婚式にも出席できず、
顔も合わせなくなってしまった事例もあります。
さらに事業承継をしたあとに、
後継者が現場との関係をつくれずに経営が機能せず、
結局、数年後に破たんしてしまったという企業もあります。
後継者の経営能力の問題だと言いきれない事例も数多くあります。
さらに、贈与を早めにしすぎてしまって、
後継者の暴走を止められなくなってしまったり、
後継者の配偶者に乗っ取られてしまったりという企業もあります。
このような事態が起こることを想定せずに、
ただ税金対策になるからということで、
さっさと贈与を進めてしまうケースもあるのです。
本来の相続税対策・事業承継対策はどうあるべきか――。
相続税が増税となった今こそ、真剣に考えるべきではないでしょうか。
相続や事業承継の何が問題なのか、何を解決するための対策なのか、
きちんと整理できている人は少ないように思います。
また、銀行から紹介されてきたコンサルタントは、
銀行の融資や金融商品の販売に貢献できるようなワンパターンなスキームを提案してきます。
それまで無借金だった会社が、
銀行の連れてきたコンサルタントの提案によって新規の融資を受けて、
本業に関係ない金融商品や不動産を買うことになったりすれば、
今までとは違う事業リスクを背負った会社になってしまいます。
相続税対策も重要なテーマではありますが、
他にも優先すべき事項があるということを対策を組む段階で
もっと知っていなければならないでしょう。
何より、バブル前後の時代の相続税対策の失敗からまだ20年程度しか経っていません。
あの失敗に学び、同じ轍を踏まないという姿勢を持っていないといけません。
相続税を安くすることよりも優先した方がよいと考えられることは、
①事業承継であれば、後継者の経営を機能させること
②家族や親族の輪が崩れないようにすること
③被相続人の今後の生活・長生きが支援されることになっていること
この3点は、対策を組む際のベースにしっかりおいて、
その会社や一族それぞれの現状と課題を踏まえた上で、
その解決にふさわしい対策を構築するべきです。
特にトラブルが生じやすい遺産分割の分野に関しては、
遺言書の準備はもちろんのこと、
可能であるなら、生前の元気なうちに家族会議を開催し、
子供たちの意向をしっかり汲み取って意見調整を行っておくくらいの
姿勢があってもよいのではないかと思います。
また、事業承継に関しては、後継者と一緒に企業の内外の課題を整理し、
一緒に解決を図っていくという作業を通じて、
後継者による経営が円滑に機能している姿を見届けてあげるのが望ましいでしょう。
この過程を通して、マネジメントを学んでもらい、
現場との接点をしっかりと作っていけるリーダーシップ力を身につけて欲しいと思います。
相続税の問題は、それはそれで重要なのですが、
こうした一連の対策を行ったうえで、
さらに相続税が安く済むならそれに越したことはない、
というくらいのスタンスで税対策を講じるのがちょうどよいでしょう。
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