2020年07月14日 ※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。
事業承継を成功させる対策には、
税金を安くするための「相続税対策」と
円満に承継させるための「争族対策」があります。
このどちらが欠けてもうまくいきません。
信託を活用した対策は、このうちの「争族対策」に効果を発揮する手法です。
「相続税対策」はネットで調べただけでも数多く見つかりますが、
「争族対策」はほとんどありません。
そういう意味で信託は事業承継を成功させるための鍵を握っているともいえるのです。
大手家具店のO社が事業承継でもめて大騒ぎしたことは記憶に新しいところです。
内情はわかりませんが、もし、信託を活用していたとしたら、
円満に事業承継ができていたのではないかと思うと残念でなりません。
おそらくO社の場合、自社株の評価を下げるために持ち株会社をつくり、
評価額が下がったところで娘さんに株式を贈与したのでしょう。
相続税対策という点では、ある程度うまくいったのかもしれません。
しかし、自社株を贈与したために、会社の経営に口を出す権利、
つまり議決権も娘さんに移ってしまいました。
それゆえにもめごとになってしまったのです。
もし、議決権が移っていなかったとすれば、
娘さんも強硬な手段に出ることはできません。
あくまでも父親と話し合いで解決をしようとしたでしょう。
このように、自社株の移転というのは非常に難しい問題です。
相続時に自社株の評価が高ければ、莫大な相続税を支払わなくてはなりません。
会社の経営を揺るがすこともあるでしょう。
それを避けるためには、自社株がまだ安いうちに、
あるいは何らかの方法で自社株の評価を下げたタイミングで贈与するのが節税のセオリーです。
しかし、O社の例からもわかるように、
後継者に株式を移転すれば、その時点で議決権も移ってしまうために、
トラブルになってしまうのです。
O社に限らず、自社株の贈与がもめごとに発展するケースは少なくありません。
贈与する時点では後継者である子どもとの関係が良好だったとしても、
何らかの事情で親子関係に変化が生じてしまうことがあります。
それがもめごとの種になるのです。
親子関係が変わる理由はさまざまですが、
子どもの結婚が引き金になるのはよくあるパターンです。
独身の間は親の意見を尊重していたにもかかわらず、
結婚した途端にてのひらを返したようになることがあります。
それだけ配偶者の意見に左右されてしまうということでしょう。
O社の場合も贈与の時点では、親子関係に問題はなかったのだと思われます。
そうでなければ贈与など行わないでしょう。
しかし、何らかの原因で親子関係に変化が生じてしまったのだと思われます。
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