2020年07月16日 ※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。
所得税法では所得を10の区分に分けており、
その中で特に低い税率が適用されるのは退職金です。
税率が通常の半分になりますし、
退職所得控除額を差し引くことができますので
少ない税負担で役員退職金を受け取ることができます。
オーナー経営者はこの役員退職金を上手に利用することで、
手元にお金を残すことができます。
ただし、メリットが大きい分、リスクも大きいので
実行するには十分注意する必要があります。
リスクというのは、税務当局に役員退職金の扱いを
否認されるケースが多いということです。
否認されてしまうと、役員退職金を受け取ったオーナー経営者も会社も
莫大な税金を追加で納付する必要が生じます。
それにより会社の経営が傾く可能性さえもあるのです。
役員退職金として認められるためには、ルールがありますから、
それをしっかりクリアして活用することが重要なのです。
ルールには主に三つのポイントがあります。
1 金額の算定が合理的であること
2 形式的な基準を満たすこと
3 実質的な基準を満たすこと
金額の算定は、役員退職金を受け取った人の在任年数や報酬の月額、
あるいは、同じような業種で同じような規模の会社が
どの程度の役員退職金を支払っているのかを参考にしましょう。
役員退職金は一般的に
「月額報酬×在任年数×功績倍率」という式で計算しますので、
これに見合った形で算定された金額であるかどうかが判断のポイントになります。
形式的な基準は、役員退職金の金額を決める際の手続きが
きちんと行われているかということです。
役員退職金の金額を決める際には、
株主総会を開き、取締役会の決議をきちんと受け、
議事録に記録を残しておかなければなりません。
ところが実際には、オーナー経営者が自分で勝手に役員退職金の額を決めて、
支給してしまうケースがほとんどです。
99%の会社は、実際には株主総会を開かずに議事録だけ作っているのが実態でしょう。
このような場合、税務調査で指摘されればほぼ否認されます。
実質的な基準とは、退職後の立場です。
退職したにもかかわらず、経営上、重要な地位を占めている場合には、
退職したとはみなされません。
当然、退職金も否認されます。
この判定は、退職後の給料が半分になったとか、
週に何日出社しているかなど、
形式的なものよりも実質的にどうなのかという基準で判断されます。
後継者が本当に全権を掌握しているかという点を事実認定で判定し、
結果、役員退職金が否認されるケースが増えているのです。
これほど役員退職金が厳しくなったのは、
2011年の通達で取り扱いが厳しくなったからです。
ただ、それからまだ4年ほどしか経過していませんので、
オーナー経営者も顧問税理士も否認されるリスクを認識していないことが多くあります。
過去の経緯から「大丈夫」という認識が、
経営者にも税理士にも残っているために危険なのです。
役員退職金を受け取り、
オーナー経営者も会社も節税ができたつもりでいても、
3、4年後の税務調査で否認され、
高額な税金を追加徴収されるケースが増えています。
最後に一気に状況をひっくり返される、
オセロゲームのようなことが起こりうるのが税制なのです。
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