2020年11月17日 ※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。
円満な相続と事業承継のために、遺言の作成は非常に有効な手段です。
遺言がなければ、
原則として法定相続分にしたがって財産を分割しなければなりません。
自社株や事業用不動産などとは別の、
分割可能な財産がたくさんあればよいのですが、
大概のオーナー経営者の財産は、そのほとんどが会社絡みのものです。
それを後継者以外の相続人にも分割しなければならないとすると、
後々経営が混乱する危険があります。
遺言を作成する際に気を付けなければならないのは、
遺留分を考慮することです。
遺留分は遺言によって侵すことのできない相続人の権利です。
後継者以外の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言を作成してしまった場合、
侵害された相続人から遺留分減殺請求をされてしまい、
相続紛争(争続)に発展してしまいます。
以上のとおり、遺言を作成する際、遺留分には配慮し、
「すべてを後継者に相続させる」などという内容は避けるようにしてください。
遺言を作成する時期は早いほどいいでしょう。
オーナー経営者がいつ亡くなるかはわかりませんし、
いつ何が起こるかわかりません。
後継者のめどがついたら、速やかに遺言を作成しておくべきでしょう。
遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
このうち秘密証書遺言は、公証役場で手続きをするなど手間がかかる一方、
公正証書遺言ほどの確実性はないので、実務上はあまり利用されていません。
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較すると、
公正証書遺言のほうがより確実ですが、
作成時に手間も費用もかかるというデメリットがあります。
もっとも、自筆証書遺言の場合、
相続開始後に家庭裁判所の検認という手続きが必要になります。
遺言を作成するとき、後継者以外の相続人の相続分を
遺留分ギリギリに設定するのもよくありません。
遺言の作成日と実際の相続開始日には時間差がありますので、
遺言を作成した時には遺留分を侵害していなくても、
その後に株価が上昇して
相続時には遺留分を侵害しているということも起こりうるからです。
多少は余裕をもって決めておいた方がよいでしょう。
遺言があり、遺留分を侵害していなければ遺産分割協議の必要はなく、
基本的に相続紛争(争続)に発展する可能性はないということになります。
しかし、遺留分を相続するだけでは納得できない相続人がいると
争いを起こしてくる可能性があります。
争いは、合理的な理由の有無にかかわらず、
起こそうと思えば誰でも起こせるからです。
ですから、単に法律上問題ないというだけではなく、
それぞれの相続人の納得が得られる内容の遺言を作成することが重要なのです。
そこで、先代経営者から、後継者以外の相続人に対し、
後継者に生活の面倒を見てもらっていること、
経営の大変さ、後継者が会社の借入金負債の連帯保証もしていること、
株式や事業用不動産を後継者に集中させる必要があることなどを
しっかりと説明しておく必要があるでしょう。
後継者以外の相続人が納得すれば、
遺留分さえいらないと言ってくれる可能性もあります。
なお、このような説明は、70代や80代になってからでは難しいでしょう。
50代ぐらいから子供たちに継続的に説明しておくことが重要です。
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